書評

感染症の世界史

感染症の世界史

新型コロナウィルスが突如現れてから世界中が変わりました。
まだまだ落ち着かない世の中。
いったいウィルスとはどんな特性があるのか?
感染症はどういった歴史を歩んできたのか?
不安な日々をいかに心落ち着けて過ごすには、、、敵をきちんと知る!!!

感染症の世界史/石 弘之

  • 出版社 ‏ : ‎ KADOKAWA 
  • 発売日 ‏ : ‎ 2018/1/25

コロナウィルスの影響を受けました。
仕事ではマスク飲食認証やら緊急事態宣言による時短営業、感染対策の徹底。。。
気持ちのどこかでは「やりすぎなんじゃない?」と思いつつも「決まり事だから」と渋々了承しながら納得しないままやっていたり。
そもそもウィルスの特徴ってどんなものなのよ?
正しく理解していれば無駄に不安になることなんじゃないか?

この本凄いですよ。
あらゆる感染症が綴られています。
教科書として読むと眠くなってしまうけど、これなら授業っぽくなく感染症を学ぶことができる。歴史の勉強にもなるしお得だらけ。
まだ新型コロナウィルスを学ぶには薄いけど、「ウィルスの特徴」の知識を得ることはできます。

インフルエンザウィルスもワクチン開発の裏をかいくぐって次々に「新型」を繰り出している。
現在大流行中の新型コロナウィルスも同様で次から次へと変異を繰り返している。
いったいいつになったら、新たな変異株の出現がなくなるのか、、、、、新型コロナウィルスの終息宣言の声が聞こえてくる気配がない。

微生物が人や動物などの宿主に寄生し、そこで増殖することを「感染」といい、その結果、宿主に起こる病気を「感染症」という。

微生物は、地上最強の地位に登り詰めた人類にとってはほぼ唯一の天敵でもある。
同時に、私たちの生存を助ける強力な味方でもある。

地球に住むかぎり、地震や感染症から完全に逃れるすべはない。
感染症は生命誕生からつづく生物進化の一環である。

微生物にとって哺乳動物の体内は温度が一定で、栄養分も豊富な恵まれた環境だ。
なんとかして潜り込んで繁殖しようと図る。
だが、宿主にとっては、病原性を持った微生物は迷惑な存在だ。
感染すると、細胞が傷ついたり栄養分を横取りされて衰弱したり、遺伝子を乗っ取られて細胞ががん化することもある。
そこで宿主は免疫による防御システムを発達させ、微生物を排除、あるいは懐柔しようと図る。
他方、微生物は宿主の攻撃を巧みにくぐり抜けて、この快適なすみかから追い出されまいとしがみつく。

その結果、両者の関係は4つのいずれかの結末に落ち着く。これは人間の戦争と変わらない。

微生物と宿主の永遠の戦い

①宿主が微生物の攻撃で敗北して死滅する。
この場合は、ほかの宿主に移らないかぎり微生物は宿主と運命を共にすることになる。
致死率の高いエボラ出血熱が局地的な流行で収まってきたのは、このためだ。

②宿主側の攻撃が功を奏して、微生物が敗北して絶滅する。
ポリオや黄熱病などはワクチンの効果によって今後根絶される期待がある。すでに天然痘はワクチン効果で根絶されている。

③宿主と微生物が和平関係を築く。
宿主の体内には、莫大な数の微生物が存在する。
宿主の顔色をうかがいながら共生しているので「日和見菌」とよばれる。
ふだんはおとなしくしているが、宿主の免疫が低下した場合には牙をむくものがいる。

④宿主と微生物がそれぞれに防御を固めて、果てしない戦いを繰り広げる
水ぼうそうウィルスはひとたび感染すると、宿主の神経細胞に永久に潜む。
平和共存のようにみえても、忘れたころに復活して帯状疱疹などを引き起こす。

宿主がいかにすぐれた防御機構を備えても感染症から完全に逃れられない。
病原体から身を守るために、宿主となる生物は防御手段を進化させる。
それに応じて、病原体は防御手段を破って感染する方法を進化させる。
そこで、宿主はさらに新しい防御手段を進化させる。
生命が存続するかぎりこの追いかけっこがやむことはない。

とくに、人と微生物の世代交代の時間と変異の速度を考えると、抗生物質と耐性獲得のこの追いかけっこは、圧倒的に微生物側に分がある。
ヒトの世代交代には約30年かかるが、大腸菌は条件さえよければ20分に1回分裂をする。ウィルスの進化の速度は人の50万~100万倍にもなる。

現生人類の歴史はせいぜい20万年だが、微生物は40億年を生き抜いてきた強者だ。

人間の進化も感染症を拡大させている理由の一つになる。
地球温暖化、高齢化社会、世界中行き来が出来るようになって、都市部には人が集中している。今まで出会うことのなかった人・動物達が簡単に接触できるようになっている。
これもまた、感染爆発のきっかけになっているのであろう。

進化した世の中で、ワクチンや抗生物質などの開発もスピーディーにはなっているが、ウィルスも同時に猛スピード進化してしまっている。
もう、こうなってしまったら、自分の耐性を強くして「ウィルスは根絶しないんだ」と半分諦めながら上手に世の中を生きていくしかないのだろうな。。。

感染に怯えて心が壊れてしまうよりは、「感染してしまう可能性はある」とまず認め、「ではそうなったらどうすればよいのか?」「最低限気を付けておくべきことはなにか?」など、きちんと知識を得て、恐れ・不安を解消して自己防衛する術を身に付ける。

そして、これを書いている今、コロナで自宅療養中ですが、、、

感染する前は、毎日不安で仕方なかったけど、陽性反応を見たら腹を括るしかないわけで、そしたら気持ちがフッと軽くなりました。
いままで罹ったことのない病気になる恐怖。。。何が恐怖だったんだろう、、、と考えると、それはきっとコロナウィルスが怖いのではなく、感染したことによって周囲から見られる、思われるだろう「世間の目」が一番怖いのかもしれない。。。