書評

日本のバドミントンはなぜ強くなったのか

日本のバドミントンはなぜ強くなったのか

選手への誹謗中傷。。。

コロナ禍でのオリンピック開催で、普段とはリズムがだいぶ狂ってしまったであろう選手側の心境、、、気になる。
4年に一度のオリンピックを目指して、選手はどのくらい前からスタンバイをしているのだろうか。。。

日本のバドミントンはなぜ強くなったのか/藤井瑞希
出版社:光文社
発売日:2021/7/13

実は親族がバドミントン日本代表選手です。
幼稚園?からバドミントンを始め、メキメキと力を発揮し、毎年「全国小学生ABC大会」で優勝。

いつも楽しそうにバドミントンをしていたように思えます。
海外でもしょっちゅう試合していたし、両親のサポートも厚く、環境にはとても恵まれていて現在に至っているのではないかな。

身近な人が日本代表選手で、オリンピックにも近いところに位置している。
というところで、バドミントンに関する本が目についたので、親近感が沸き早速読んでみました。

著者の藤井瑞希さんは2012年のロンドンオリンピックで銀メダルを獲得。
4歳でバドミントンに出会い、「やりたい!」と思ったものの、クラブチームでは小学校4年生から。
でも、このクラブチームは彼女を5歳から一員として迎え入れたのです。型にはめた「基準」よりも、本人のやりたい気持ちを尊重して年齢が達する前から始めさせてあげたのは、素晴らしい!!
4歳の瑞希さんからしたら、1年待つのも長い時間だったとは思いますが。。。
こういう、縁って感動。

ここからひたすらバドミントン漬けの毎日ですよ。
友達と遊んでいても、トレーニングのためには中断してバドミントン。
続けなければ勝てないし、続ければ勝てる可能性は高くなる。
小学4年生にはすでに「目標から逆算して課題を整理する」思考が習慣化されるまでに自分のレベルをUP!
すごいな。
夢中になれるものが見つかると、年齢関係なく大きなものを得ることができるんだ。
目標達成のためにやるべきこと。すでに小学4年生で学んでいる。。。

さらに、周りの空気を読み相手の立場に立って考えることで、思考のメカニズムも習得。
「コートでは女優になれ」
「疲れていても、疲れた顔をするな」
ラリーが続く接戦では、表情は険しくなりがちで疲れを押し隠すのが難しくなる。
そうすると相手に”スキ”を見せることになってしまう。
逆に疲れていなけどわざと疲れているように見せたら、相手はどう出てくる?
結果は上々。女優どころか、大女優ですよ。

そしてオリンピックまでの道のりですが、
まずは日本代表選手に選ばれること。で、この
日本代表のトレーニングに慣れるまでに1年以上かかる!

オリンピック出場を狙う選手は、1年間に一定数以上の大会に出場し、ポイントを稼いでいく「オリンピックレース」という戦いに臨むのです。
世界のトップレベルと試合をすると、負けてしまうことの方が多い。
いかに負けを受け入れて引きずらないことがオリンピックレースを乗り切るための心構えになる。
藤井選手はオリンピックレースが終わり、オリンピック選手代表に選ばれたら今度は猛烈な脱力感に襲われてしまいます。
オリンピックの出場枠を得るために費やした日々が心を削り取ってしまい、「バーンアウト」。
日本代表に選ばれているのだから、負けるわけにいかないというメンタリティを拭い去ることができなくなってしまう。

獲れたらいいな」くらいにしか考えられなかったメダルは「獲らなきゃいけない」ものに変わり、いきなり息苦しさに襲われ、プレッシャーに押し潰されそうになる。
試合を迎える事が怖くなる。

あらゆるものを乗り越えてついに
銀メダル獲得!!

実際にメダリストになって気づいたことは、、、
オリンピックの開幕前からメダルを期待され、そのとおりにメダルを獲ることがどれほどすごいことなのか。
メンタルが鋼のように強いか、ケタ外れな鈍感力の持ち主のどちらかでなければ、プレッシャーには耐えられない。

バドミントンは相手のメンタルを探り当てる「メンタルのスポーツ」といっても過言ではないそうで。
相手の表情から目の動き、汗の出方からちょっとした仕草にまで神経を配る。。。洞察力と観察力。
そして、ミスした後の回復力。

体力はもちろん、試合中はメンタルエネルギーも全力です。試合後はエネルギーなんてひとつも残っていません。

ここまでの道のり、鍛え上げてきた背景はなかなか語られないもの。

私たち「観客」は試合だけを観て「勝った」「負けた」を感情的にあまり深く考えずに語ります。
メダル確実だったのに、獲れなかった。からの誹謗中傷。
他人がとやかく言う事ではありません。

いくら試合でメンタルを鍛えていたとしても、SNSでの誹謗中傷の嵐にはとうてい立ち向かう術まではないし、そこを鍛える必要もないと思います。
選手一人ひとり、日々自分と向き合っているのです。
ジャッジは本人だけがすればよいこと。

純粋に試合だけを考えて思う存分力を発揮できる環境になって欲しいものです。