書評

生贄探し 暴走する脳 

生贄探し-暴走する脳

今日もあちこちで生贄が祭り上げられている。。。
次のターゲットは誰なんだ?
毎日毎日色々な人を生贄にして吊るし上げる行為、、、それってみんなが幸せになるようなことなのかい?

 

暴走する脳 生贄探し/中野信子・ヤマザキマリ

出版社:講談社
発売日:2121/4/22

体内に取り込まれた異物を排泄するがごとく、集団は異質な者をどうにかして排除しようと足掻く。
体中の免疫系の細胞を総動員するようにして、この異物を攻撃する。。。

個体ひとりひとりの考え方を聞けば、さほど良識がないとも思えないのに、集団になるとそれだけで凶暴になる。
誰のコントロールも受け付けない。

赤信号、みんなで渡れば怖くない!的な???

正義という名の暴力者は、問答無用で異物を排除しようといつも生贄を探している。
危機的な状況が起これば、少しでもはみ出したものから生贄に捧げられてしまう。。。
今世界中が危機的な状況だ。だからさらにたちが悪い。
でもさ、ちょっと考えてみようよ。
生贄探しという、こんな状況こそが危機的だよ?

悲しいかな、ヒトは放っておけばそういうことをしてしまう生き物らしい。
だからこそ、知性でそれを押しとどめる必要があるのだと。

自らを「正義」と思い込んでしまうと、人間はどんなに残虐なことでも心の痛みをあまり感じなくやれるようになってしまう。

確かに、大切な家族に理不尽なことが起きると、それを全力で守ろうとする力が働く。その時、相手がどうなろうと知ったこっちゃない!と、猛攻撃したりする。
うちの子が近所の子にいじめられた。
なんだって?!誰にやられたんだ!やり返してやる!!!!!
とね。。。

心の痛みが感じなくなって、相手に残虐なことをやってしまうような現象は、社会が危機感に覆われ、人々が不安にさらされるほど強まってしまうらしい。
こんな危機的な状況にあるのに、なんであの人は和を乱すんだ?
みんなで乗り越えて解決していかなくてはいけないのに、あの人が乱すから解決できないんだ。
あんなやつは排除するべきだ!そうだそうだ!!そうしよう!!

コロナ到来してからは、本当にひどい。

心の中では「これって違うよな」と思うような事でも、集団からの圧力に耐えられる力を持っていないので、??マークを頭につけながら行動している人も多いのでは。。。
例えば、周りに人がいなくて感染リスクがほとんどなくてもマスクをする(マスクをしていないところを見られたら、、、)
自分は悪いことが何もないのに、周囲の目線におびえながら生きている人も多いのでは?

そもそも集団にとって都合の悪い個体を見つけ出し排除する仕組みが、人間には備わっている。
けれども、これを過激化させないのもまた人間の知恵。
他人が失敗したり、不幸に陥ったりしたときに、思わず湧き上がってしまう喜びの感情を残念ながら人間は持っている。
他人の不幸は蜜の味っていうくらいですからね。
でも、最近蜜の味を味わいすぎてません?蜜食べすぎて甘い甘い。

もちろん、自分の心の中にも誰かを陥れずにはいられない正義中毒の牙があるのは自覚しています。
だからこそ、過激に攻撃するようなことにならないよう、自分を自制する術をこの本で学んでいるのです。

逆に幸せそうな人を見るともやっとすること、ありませんか?
自分が苦しくてつらい時、誰かの幸せそうな姿をみると、イライラする。
自分はこんなに辛いのに、なんであの人だけ幸せになってるの?

分かりやすいのが、友達の結婚を素直に喜べない。(自分に結婚願望が高くて、でもまだ結婚の見通しが立ってない時は、結構むかついたりするものです)

でもこの気持ちに罪悪感を抱く必要はないのです。
こうしたネガティブな気持ちもごく自然で健康な、生物としての人間機能のひとつ。
人間の脳というのは、基本的には人間同士を近くにいたがるように作られている。
そのことで助け合いをしやすくする、つまり互恵関係を築きやすいように仕向けられている。
一方で、近づきすぎると今度は傷つけあうようにもセットされている。
近付きすぎず、離れすぎず、適度な距離感が大切。実に面倒くさいですね。

人間の脳は人と比べないと幸せを感じられない。。。。
じゃあ、人と比べないで過去の自分と比べればいいんじゃないか!
そうですよ。言うのは簡単。
でも、それを分かっていたら、とっくの昔から言われているし、実行している。
でもそれが出来ないから今もみんな悩んでいるのです。
どうして脳みそは人と比べるような感情を作ってしまったんだろうか。。。
人間は「誰かと一緒に幸せになる」ということを苦手とする不思議な脳を持ってしまっている。悲しいかな、、、
だからこそ、この感情とどう向き合って、どういう行動を取るべきなのか、学ぶために神様はこの脳みそを与えてくれたのかもしれない。

あなたは、自分の脳みそとどうやって向き合いますか?