書評

芸人人語

芸人人語

爆笑問題の太田光著。芸人というものはどういうものなのか?芸だけで食べていくことに必要なのは、「一生恥をかく」という覚悟。飯の種は自分も含めた「人の失敗」。人の失敗と一生恥をかくこと。芸人は「人を笑わせる」ことを生業としている。笑わせられるのか、恥だけで終わるのか、ボーダーラインが見えない難しさ、芸人の胸の内を探る「天声人語」ならぬ「芸人人語」さて、内容はいかに、、、

芸人人語/太田光

  • 出版社 : 朝日新聞出版 (2020/12/18)
  • 発売日 : 2020/12/18


様々な時事問題を扱いながら、太田光目線での見解を細かく説いている。文章量が圧倒的に多いのは、脳内で蓄積されている考えが膨大なのだろう。
テレビではその一部分だけが切り取られ、歪んで放送されることも多々。もっともっと言いたい、伝えたい思いがこの文章量と比例しているのではないか。

言葉・・・言葉の周りにあるものを感じ取る必要性が大事。感性で読み取り、非科学的な跳躍で変換し、それを断定し、確信し、周りから悪と思われようとも、異常者と言われようとも、それが後で誤解だったとして責められ用途も構わない、という覚悟を持つ。
存在・・・今の自分は本当の自分なのか?自分は嘘くさい。自分は清潔で純粋な人間ではない。嫌らしく、あざとい人間だ。汚れた所も、無垢な所も同時に自分の中にある。自分は実にありふれた凡人なのだ。とても未熟な人間であり、それは当たり前なのだから、自分の未熟さは許されるのだ。未熟でも生きていていいのだ。
芸人・・・芸だけで食べていくにはどうすればいいだろうか?芸人は客から「笑われる」ことで生きている。爆笑問題の笑は人を傷つけると言われることも多い。誰も傷つけないような笑いをしてみろと。お前を許容しないと言われても、すべった転んだを続けていくという強い思いだ。その覚悟をした人が自分を「芸人」と呼ぶのだろう。
笑いといじめ・・・人の失敗は面白い。いじめは笑いに含まれている。人は誰でもそうとは気づかないうちにいじめに参加している可能性がある。人は人と違うことを面白がる。人の失敗で笑ったことがないという人と、いじりといじめは違うという芸人と、わが校にいじめはないという先生に嘘くささを感じる。何かにふたをしていないか?と。
覚悟・・・覚悟とはなんだろう。覚悟とは、物事に命懸けで向き合う態度ではないだろうか。世の中はいろんなものが時間とともに下火になっていく。当然ながら今日の自分のことで必死だ。しかし同時に今は下火だが、見て見ぬふりではすまされないモヤモヤが残っていることを誰もが心の奥で知っている。

人間は頭の中で理解することと、心で感じることに大きなギャップがある。だから人は揺れる。揺れるからこそ人の行動は言葉や数式で説明できない。機械になれといってもなれない。人は人だから面白く魅力的なのだ。

いじめ、政治的問題、コロナ、虐待、世の中のあちこちで巻き起こっている様々な問題をこんなに真正面から自問自答しているとは。芸人魂というよりも、太田光魂のすごさを感じた。太田光の脳内はとんでもない状態が起こっていたのだ。マジメで芸人とは思えない時事問題集というジャンルという感じです。